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田村 緑(ピアノ)
ロンドンのギルドホール音楽院を首席で卒業し、シティ大学院を修了。インターカレッジ・ベートーヴェン・ピアノコンクール第1位他受賞。帰国後、全国各地でコンサート活動を行う。NHK-BS「ぴあのピア」出演。(財)地域創造アーティスト。
アーティスト プロフィール
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10月20日、ピアニスト・田村緑さんのアウトリーチが大河原町立大河原中学校で行われました。1年生を対象に、約90分という充実した内容。前半の第1部は、ピアノへの関心を深められるプログラムで、クラシック音楽とはどういうものか、またピアノの機構についてのクイズなどが盛り込まれ、生徒たちもグイグイと田村さんの〝ピアノワールド〟に引き込まれていきました。生徒の作った俳句をクラシック曲に合わせて朗読したり、演奏を床に寝そべって聴いてみたり、またピアノの重要な部品の一つである響板の機能を体感してもらうため、演奏の最中にピアノの下に潜り込んでもらい、振動する響板を触らせてもらったりなど、通常の音楽の授業ではないような教え方に、生徒たちも喜んでいました。
後半の第2部はコンサートのような趣向ではじまりました。ドレス姿で登場した田村さんが、ドビュッシーの『アラベスク』、リストの『愛の夢』を立て続けに弾いていくと、その素晴らしい演奏に生徒たちはすぐに圧倒された様子。リストの『波の上の渡るパオラの聖フランチェスコ』では、演奏の前にリストがどういう人物か、また元となった物語の世界観を、絵を使って解説。「今のストーリーを、リストがどういう風に〝音化〟したか、考えながら体で感じてみてください」という田村さんの言葉を受け、生徒たちは目をつぶって、演奏に聴き入っていました。
授業の最後には、生徒たちのこの日のアウトリーチの感想を、漢字一文字で表現してもらう試みも。「夢」「心」「響」「感」など、生徒たちは思い思いの感想を綴り、この日のアウトリーチは幕を閉じました。
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クイズ形式でピアノの構造を紹介
床で寝ながら演奏を聴く
『波の上の渡るパオラの聖フランチェスコ』のライブ!
クラシックやピアノの楽しみ方を伝える
夢」「心」「響」「感」など、生徒たちは思い思いの感想を綴る
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(——今日の感想をお願いします) 今日は楽しかったです。というのは、中学校にアウトリーチに来ること自体が結構珍しい。思春期の真っただ中、すごく感受性が豊かな年齢層に突入して、いろいろな経験をしながら成長しているお子さんに出会えるのがすごく楽しみでしたし、今回90分という長い時間を頂いたことは、自分としては挑戦だと思っていたので。〝どんな風に組み立てたらいいかな〟って楽しみながら考えて、今日は2部構成にしてみました。
(——構成にはどんな狙いがありましたか?)
前半は、音楽を聴く耳と心を作る時間かなあ。その取り組みを楽しくやってもらいたいと思っていまして、参加型のものも入れつつ進めてみました。後半は、ドレスも着て、この学校の音楽室をコンサート会場のようにして、ぐっと音楽の世界に、ピアノの音楽の世界に、深いところまで、今日は連れてけたらなあって気持ちでやりました。
お子さんたちは日本の宝のような存在。そういう人たちに、自分が演奏家として、音楽を共有する存在として、音楽の力を通して新たな世界を知ってもらいたいし、体のいろいろな感覚を呼び起こせたらなって思っています。実際に自分が音楽と接して、刺激をもらって、さまざまな新しい世界を見てきたので、今度は自分が音楽を通じてお子さんたちに今までなかった世界を見てもらいたいなって思っています。
(——えずこホール20周年へのメッセージをお願いします)
(えずこホールとの)お付き合いは2000年からなので、もう16年くらい。長いですね(笑)。今日の学校は初めて伺ったんですけど、アウトリーチで毎年行かせていただくところもありますし、長くご一緒しているスタッフもいらっしゃいますし、私にとっては〝帰ってきたー!〟っていう場所です。
全国いろいろなホールに行かせていただくんですけど、(それらと比べても)このえずこホールの取り組みはものすごく素晴らしいものだと思っています。まず、えずこホールが市民の皆さんには発信しているジャンルが多岐にわたっていること。また、そこから一緒に何ができるのかということを、ずっと探っていらっしゃることです。そうして作っていく形というものが、そこでしかできない唯一のものだと信じている。そういう活動を続けてこられているというのが、本当に素晴らしいことと思います。
関わらせていただくアーティスト側にとっても、ここは成長の場というか。チャレンジの場を与えてもらって自分の可能性を新たに引き出していただいているとも思うんです。そして、それもまた市民の皆さんと共有できるという、いい循環ができているなと思っています。
スタッフも、住民の皆さんを見ながら、愛を持って事業を進めていらっしゃる。またスタッフが変わっても(その想いが)受け継がれているのが、私たちアーティストにはすごく励ましにもなっています。本当に毎回来させていただくのが楽しみなので、ずっとこの活動を続けていってほしい。20周年周年おめでとうございます。3月のお祭り的なコンサートに伺うことを楽しみにしています。
(文:乾祐綺)