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楠原 竜也(振付家・ダンサー)
玉川大学文学部芸術学科演劇専攻卒業。2002年「APE」を結成・主宰。2005 年よりテレーサ・ルドヴィコ(イタリア)演出『雪の女王』、『にんぎょひめ』、『旅とあいつとお姫さま』に出演し、俳優としても活動。ワークショップや、アウトリーチにも積極的に取り組む。法政大学、女子美術大学、玉川大学、国立音楽大学非常勤講師。
アーティスト プロフィール
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「こんにちはー!」「よろしくおねがいしまーす!」と元気な挨拶で始まったのは、振付師やダンサーとして活躍する楠原竜也さんのアウトリーチ。9月28日、丸森町立大張小学校と丸森町筆甫小学校を舞台に、それぞれ全学年が参加しました。 大きな身振り手振りで動作する楠原さんの仕草を、子供たちが真似をしていく遊び「まねっこ」からでスタート。杖をついたお年寄りの格好や動物の仕草をしたり、おにぎりを握って食べる動作をしてみたり。
体を動かすのに慣れてきたら、今度は2人一組で、手と手、膝と膝など、お互いの体の部位をくっつけたまま、さまざまなポーズをする遊びに。子供たちはほかのペアに負けじと、オリジナルのポーズをどんどん開発して、楠原さんも「いいね!」と驚きの様子でした。体遊びは、さらにレベルアップし、2人組で体をくっつけたまま、しゃがんだり、回ったりと、動きを取り入れたものから、4人組になって「うねうね長いものを、5秒で作る」という、面白くも難解なお題へと発展。次いで生徒を2チームに分け、それぞれ別のテーマ(〝大きいもの〟と〝ぐちゃっとしたもの〟)で形を作ってもらい、動きまで入れるというものも。けれど、いずれも「すごい! すごい!」と楠原さんを感心させる形や動きとなりした。
2人組での遊びもいろいろと楽しみました。腕や股、足などを使ってトンネルを作り、くぐり合う遊びや、〝超スローモーション〟で動き合う遊びなど。ペアで目線を合わせたまま、音楽に合わせ自由に動き合う遊びは、なんだかおしゃれなダンスのように見えました。「この目を合わせながら踊るのは〝アイコンタクトダンス〟と言います。今度はそれを3人でやります!」という楠原さんの指示で、3人組で入れ替わりながらダンスをすることに。初めは戸惑いつつも、トンネルしたり、ブリッジしたり、次第にみんな思い思いに、そして楽しみながら体を動かし始め、アイコンタクトダンスを楽しみました。その様子は、さながらコンテンポラリーダンスのような、どこかアーティスティックな印象さえ受けました。
終了後、楠原さんは子供たちに言います。「ダンスにはいろいろあります。今日のは〝コミュニケーションダンス〟っていう相手と一緒にやるもの。ルールはあるけど自由。相手に合わせたり、相手の動きを見ながら自分で考えてダンスをしたり。楽しいでしょ? そして今日はみんなで考えたから、みんなが振付家なんだよ」。
子供たちも、「肘とか、体をくっつけるのが面白かった!」「アイコンタクトが面白かった!」と感想を発表し合い、この日のアウトリーチは終わりました。 -
ものまねでウォームアップ
友だちのブリッジをくぐる
2人で一つの形
アイコンタクトで一緒に動く!
〝友達と一緒に作る〟 楠原さんのダンス遊び
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ダンサーとしてだけではなく、俳優としても国内外で活動する楠原竜也さん。今回のようなアウトリーチは、ご自身がやりたい活動と深くリンクしていると楠原さんは話します。「僕自身が演劇とダンスの間というか、もともと体を使って演劇をやりたいってところから始めているので、いろんなものに対して興味があるぶん、それらを融合させて、僕独自の表現というか、参加者と一緒に行う活動ができたらいいなと思っています」。
この日のアウトリーチは〝かなりスピーディ〟な展開が印象的でした。ですが、そこに楠原さんのメソッドがあることもわかりました。「まあ、僕自身、間(ま)が怖いということもあるんですけど(笑)、あえて〝前のめり〟になってもらうというか、欲求を煽る意味でテンポは早めていますね。子供の動きを待ちつつじっくりやるよりも、少し煽りながら、刺激を与えて、ある意味〝頭で考えるよりまず動いていこう。でも、動きながらも考えていこう〟って思考になるように、スピード感は意識していますね」。
楠原さんにとってワークショップやアウトリーチはライフワークのようなものだそうです。活動を通じて伝えていきたいメッセージを伺いました。 「今の時代、コミュニケーション能力が求められていますが、それを言葉じゃない部分、身体とか、私たち日本人が得意である空気とか、そういった言葉以外のものでもコミュニケーションできるということを、ダンスのワークショップの中で掴んでもらえたらなって。体を使って友達と関わることや、友達と一緒にするから楽しいとか、また友達によって表現が変わる、その違い自体を楽しめるってことも伝えたいですね。さらには、自己発見と他者理解。自分はこうしたけど、彼はこういう風にしたよな、とか、自分のことも発見しつつ友達のことも理解できるようになってくれたら、と思いますね」
言葉以外でのコミュニケーション方法を伝えたい
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最後に、えずこホール20周年に向けて、メッセージをいただきました。
「2010年にイタリア人演出家の作品出演で訪れたのが最初です。2011年からはダンスのワークショップをする機会をいただいて、2012年は〝ダン活〟(公共ホール現代ダンス活性化事業)という事業で、ダンス公演もさせていただきました。えずこホールでは、たくさんのアウトリーチやワークショップが開催されていて、活動されているアーティストの方々も独特の感性を持っているすばらしい人たちばかりで、その中で自分も関わらせていただくことがすごく光栄ですね。音楽にしても、演劇やダンスにしても、世界中からいろんなアーティストが集まり公演しているので、この地域の人たちは毎年刺激的な作品を見られて、とても羨ましいなと思ってもいます。子供たちと活動させていただく中で思うのは、仙南にはとても素直な子供たちがいっぱいで、ちょっと刺激を与えると、何倍にも僕に返してくるってことです。僕が〝与える〟というよりも〝もらっている〟って感じでしょうか。これからも引き続き関わって、もっともっと心豊かな子供たち、そして大人たちと活動していきたいなと思っています」
(文:乾祐綺)