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柏木 陽 (演劇家)
1993年、演劇集団「NOISE」に参加し、劇作家・演出家の故・如月小春とともに活動。2003年にNPO 法人演劇百貨店を設立。全国各地の劇場や学校などで、子どもからおとなまで、幅広い世代を対象に独自の演劇空間を作り出している。青山学院女子短期大学、大月短期大学、和光大学等で講師も務める。
アーティスト プロフィール
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9月20日、演劇家・柏木陽さんによるアウトリーチは、美しい蔵の町並みで知られる宮城県柴田郡村田町にある村田保育所で行われました。当日は小雨降りしきるあいにくの天気でしたが、施設内では子供たちが元気いっぱいに、今か今かと柏木さんの到着を心待ちにしていた様子でした。
柏木さんのアウトリーチは、絵本の読み聞かせをベースにしつつ、参加する子供たちと一緒になって遊ぶもの。絵本に描かれている世界観を尊重しながらも、例えば内容をそのまま読むのではなく体全体を使ってオーバーアクション気味に表現したり、また例えば絵本の登場人物たちの行動を真似てみたり。この日参加した20名ほどの子供たちも、最初は緊張しながらも、徐々に〝柏木ワールド〟に引き込まれていきました。
絵本で遊ぶ、ということをとことん突き詰めた柏木さんのアウトリーチは、当然ながら子供たちに大好評。柏木さんが予定していなかった絵本まで読まされるという嬉しいおまけまでついて、この日のアウトリーチは終了しました。
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絵本の読み聞かせをする柏木さん
絵本のシーンを真似してみる
絵本を遊び尽くす〝柏木ワールド〟炸裂!
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——今日使われた絵本と狙いは?
まず1冊目は『まねっこねこちゃん』。一番最初に「真似してね」って思いで、導入に使っています。真似するって、演劇や美術の基本みたいな部分があって。真似をするということは単純だけど面白いので、いつもこれをやってから(ワークショップなどを)始めるようにしています。
2冊目は『シルクハットぞくはよなかのいちじにやってくる』。これは、お話がとっても単純で、登場人物の行動がすごくわかりやすい。「この行動をするとシルクハット族だ!」ってのがはっきりしているので、その行動を真似することで「シルクハット族になれるね」とか「あ、なっていないね」って、遊びやすいので使っています。あとは、幼稚園や保育園、小学校低学年のお子さんとかって、止まったり、しゃべらないってのがとても難しいので、この物語のように、しゃべらなかったり、足音を立てない登場人物の真似をすることが後々、(保育所の)先生たちが(子供たちを静かにさせたい時などに)「シルクハット族になってね」とかって使えるかなとも思い、選びました(笑)。
最後は『かぁかぁもうもう』。年齢的には、もう少し低い人向け、2、3歳くらいかなあ。「かぁかぁ」「もうもう」言い合う、カラスと牛の争いというか、張り合というか、そういうもの。読んだ瞬間に、実際にみんなでやってみたら面白いだろうって思ってやってみました。
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柏木さんの読み聞かせに引き込まれる子どもたち
アウトリーチ終了後、柏木さんにお話を伺いました。
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——今日の感想は?
こういうことをやっても多分忘れると思うんですね。幼稚園や保育園でやったことなんて、すぐ忘れちゃうと思うんです。けれど、頭のどこか奥の方に残ってて、「ああいうことはいいことだ」「楽しいことだ」っていう風に反応してくれる人になってくれるんじゃないかなあと思うんですね。例えば、自分が高校生くらいになった時に文化祭で出し物をやろうってなった時に、「出し物やるなんていいじゃん!」って面白がってくれたり、また例えば自分が親御さんになったら、子供の幼稚園や小学校で「演劇をやらないの?」って、積極的に働きかけてくれるようになってってくれたら嬉しいなって思います。
(文:乾祐綺) -
絵本の登場人物になりきる