えずこホール開館20周年記念事業 えずこせいじん博覧祭

〜60歳から楽しいクラブ活動シリーズ〜

演劇&音楽ワークショップ

2017.2.22

事業概要



えずこホール会議室で開催された、音楽家・片岡祐介さんと演劇家・柏木陽さん2人による演劇&音楽ワークショップ

    アーティスト プロフィール

  • 柏木 陽 (演劇家)
    1993年、演劇集団「NOISE」に参加し、劇作家・演出家の故・如月小春とともに活動。2003年にNPO 法人演劇百貨店を設立。全国各地の劇場や学校などで、子どもからおとなまで、幅広い世代を対象に独自の演劇空間を作り出している。青山学院女子短期大学、大月短期大学、和光大学等で講師も務める。

  • 片岡 祐介 (音楽家)
    東京音楽大学で打楽器を学ぶ。障害者、高齢者施設、病院など様々な場所で、即興音楽セッションを行う。06年度、NHK 教育TV 番組「あいのて」にレギュラー出演。12年~13年、京都女子大学と京都造形芸術大学の非常勤講師を務める。

    自分たちで歌をつくり、演出する

  • 2月22日、えずこホール会議室で開催された、音楽家・片岡祐介さんと演劇家・柏木陽さん2人による演劇&音楽ワークショップ。本ワークショップは全4回の構成で、最終的には3月5日のえずこホール開館20周年記念イベントで、その成果を発表するというもの。今回はその3回目です。

    ワークショップの目標は、自分たちらしい歌詞、メロディ、振り付けなどを自分たちの手でつくり上げること。この日は、これまでの講座の中で練り上げた歌詞を、さらにブラッシュアップするという内容でした。

    「前回を思い出しながら歌ってみましょう」と片岡さんが促し、参加メンバー全員で歌詞を熱唱。ちなみに歌詞はこんな感じ。

    タイトル:コウレイか(制作途中)
    作詞:参加者のみなさん&片岡さん&柏木さん

    オギャーと生まれて もうハタチ
    18恋して ハタチで失恋
    こどもかおとなか分からない
    でも 酒もタバコの一人前

    気がつきゃアラフォー 家では子育て
    職場じゃ中間管理職

    あっという間にアラカンで
    赤いずきんちゃんちゃんこ

    コウレイか コウレイか
      65才はコウレイか?
    コウレイか コウレイか
      75才はコウレイか?

    人生いつから下り坂 人生いつでも上り坂
    まさかもあるよ 楽しくいこう

    5回目のハタチをむかえるぞー!!

    歌い終わると、今度は柏木さんが、「みなさんのハタチやアラフォーの思い出を、歌詞のアクセントとして途中に入れてみませんか?」と提案。メンバーそれぞれが心に残っている思い出を発表してもらうことに。

    「ハタチの頃、仙台から1人で電車に乗って、当時東京に住んでいた好きな人に会いに行ったなあ」
    「オレはバーでシェーカー振ってたよ」
    「白衣の天使を目指して看護学校に通っていました」
    「天井がグルグル回るぐらい飲んでた!」

    「40歳の頃は一番忙しくて覚えてない」
    「私は旅行しまくってたよ!(笑)」
    「婦長になっていたからまさに中間管理職。上と下に挟まれて大変だった」
    「私も記憶がない。やることをこなすので精一杯」

    個性的かつ時代を反映したエピソードの数々に柏木さんも「いいですねえ!」を連発。当時の話にも花が咲きました。歌詞と歌詞の間で、オペラ風に発表することに決まり、次はエピソードを短い一言コメント風に再編集する作業へ。

    女の戦い。敵は姑。惰性の夫婦
    婦長と呼ばれて忙しく
    忙しすぎて 流行りの歌はなんだっけ?
    ネオンの海で オレはシェーカー振ってたよ
    子育て介護に日々流れ
    夫と子供を置いては旅行中
    (一部抜粋)

    いずれも時代を反映しつつ、パンチの効いた一言コメント。片岡さんの演奏で、試しにいくつかのコメントを入れた歌詞を全員で歌い上げると、「うーん、どれもいいなあ。コメントのセレクトと、どんな風に発表(発生)するかは、次までの宿題ね」と柏木さんが締め、この日のワークショップは終了しました。

    残すワークショップは1回。どんな仕上がりになるのでしょうか。えずこホール開館20周年記念イベントでの本番が楽しみです。



  • えずこホール2階の練習室に集まる

    柏木さんのインタビューで話もはずむ

    ゆるくも真剣な参加者のみなさん

    年代ごとのキーワードを書き出す

    貼りだされたキーワード

    参加者の思い出話に盛り上がる

    「部員が主役、僕は顧問の先生みたいな感じですね」

  • ワークショップ終了後に、片岡さんにお話を伺いました。

    ——今日の感想をお願いします。
    「60歳から楽しいクラブ活動シリーズ」が始まって4年目くらいでしょうか。今年から入られた方もおられますが、もうみなさんが仲良くなっていますし、しかも、自発的にいろいろ始めてくださっています。まさにクラブ活動という感じで、部員が主役、僕は顧問の先生みたいな感じですね。すすんで進行をしてくれる人もいるので、僕が口を挟むことができないくらいの時もあります(笑)。今日も、歌詞やメロディに関して、活発に話し合われていたのがよかったですね。最後に「宿題」という形で課題を投げましたが、このワークショップに参加されている方は、むしろそれを楽しんでくれるんです。

    そして集中してやっているのがすごい。やっぱり楽しいんですよね。夢中になってピアノを弾いている時、気づいたらかなり時間が経っていたっていうような、クリエイトしている時間に似た、とても何か清々しい感じがしますね。

    ——どんな仕上がりを期待されていますか?
    今日、柏木さんのインタビューにみなさんが答えているのを聞いて思ったのは、いろんな方がいて、そこにある人生もそれぞれだということ。その凸凹具合、個性が見えてくるほど面白いものになるんじゃないかなと思っていています。

    ——20周年を迎える、えずこホールへのメッセージ
    まずは20周年おめでとうございます。10周年の時に関わらせていただいて、あれからもう10年が経つのかと、早いもんだなと。当時を思い出しても、ますます活発になっていると感じるし、街のみなさんが非常にコンビニエンスにホールを使っている気がしていて。公共ホールってのは、こういう風にみんなが遊び場として使ってなんぼだな、と改めて思っています。街自体にも、すでに特色が出ているような気もします。この街の人は即興でなにかできるとか、音楽や演劇に一言うるさいタイプの人がいっぱいいるとか、そんな感じすらしますね。

    10年間コンスタントに関わらせていただいた中で僕が感じた変化は、外から講師が来て何かを教わるという雰囲気ではなく、もうちょっと住民が主体的になってきているように感じています。普通はプロが来ると〝指導する〟みたいな感じになりやすい。でも、ここでは気づいたらみなさんがなにかやっている。僕はそれを見て楽しんでいる、ちょっと〝浴び〟に来ている感じがあります。でも逆に、だんだん寂しくなってきちゃう。僕がいなくてもやれているみたいな(笑)。きっとリラックスしてきたんでしょうね。〝音楽家の先生が来ているから言うこと聞かなくちゃ〟ではなく、〝なんだ遊びなんだ〟ってことに気づいたというか。

    そうそう、最近思うところがあって。なんで図書館がCDや本を貸してくれるのかというと、憲法で保障されている「健康で文化的な最低限度の生活」という部分にかかっているみたいなんですね。そう考えると、公共ホールで、ほぼ無料で、しかも年間で相当な数の演劇やワークショップなどを見たり体験できたりする、えずこホールの活動は理にかなっていると思うんです。日本中でもっとこういう取り組みが行われるといいなと思いますね。


    (文:乾祐綺)

  • ワークショップ終了後に、片岡さんにお話を伺いました。