えずこホール開館20周年記念事業 えずこせいじん博覧祭

〜60歳から楽しいクラブ活動シリーズ〜

上田假奈代

詩のワークショップ

2017.2.2

事業概要



詩人・詩業家としてさまざまなワークショップメソッドを開発し、全国で活躍する上田假奈代さんによる詩のワークショップ。

    アーティスト プロフィール

  • 上田 假奈代(詩人・詩業家)
    1992年から詩のワークショップを手がけ、2001年「詩業家宣言」全国で活動。2003年ココルームをたちあげ社会と表現の関わりをさぐる。「ヨコハマトリエンナーレ2014」に釡ヶ崎芸術大学が参加。2014年度文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞。著作「釡ヶ崎で表現の場を作る喫茶店ココルーム」(フィルムアート社)

    〝他力本願〟の詩作ワークショップ!?

  • 2月2日、えずこホールの会議室で行われたのは、詩人・詩業家としてさまざまなワークショップメソッドを開発し、全国で活躍する上田假奈代さんによる詩のワークショップ。この日は60歳から楽しいクラブ活動シリーズの一つとして催されました。

    参加者のみなさんは、詩作をしたことがない方がほとんどだったようで、「詩なんて本当にできるの?」と、少し不安げな様子。そんな参加者の気持ちをほぐすかのように、「まずは体を動かして、ストレッチをしましょう!」と上田さん。「自分の名前に、ストレッチで振り付けをつけてみて。それをみんなで真似していきましょう!」という上田さんによる不思議なストレッチで、場の雰囲気は徐々に和やかなものになっていきました。

    「体が温まったね! では詩作を始めようと思います。普通、詩は1人でつくるものですけど、今日はペアでつくってもらおうと思います。まずはテーマを探すため、一人ずつ近況報告をお願いします!」という上田さんの進行で、参加者は最近気になっていることや記憶に残っていることなどを次々に発表していきました。近況報告の中から、心に残ったキーワードを参加者全員で共有。この日は「犬」「夜のおもちゃ箱」「孫4人」「震災」「語り部」蝋梅」の6つのキーワードの中から、詩作するテーマを選ぶことになりました。

    「ペアになりましたか? ではまず好きなテーマを選んでください。次に、そのテーマに関連した絵を描いてください。時間は2分。はい、始めてください!」と上田さん。参加者が絵を描くと、次はインタビューに。ペア同士で、なぜその絵を描いたのか、どんな思い出があるのか、などを聞き合い、メモしていきます。取材後には絵を交換し、ここからは1人の作業へ。「取材した内容をもとに、相手のことを、想いを詩にしてみてください。コツは、まずはタイトルをつけること。詩のいいところは主語が自分でなくてもいいし、モノでも動物の気持ちで書いてもいいところ。また、『連』といって、1行空けることでテンションや空気を変えることもできます。とにかく詩の世界は自由。自由にやってみてください。もし、何も浮かばないって人は、取材した内容を箇条書きにしてもいい。それでも十分詩になりますからね」。

    そうして出来上がった詩を、それぞれ相手が描いた絵の脇に清書していく参加者たち。そして最後は朗読タイムへ。「朗読はね、文字を読むのではなく、そこから湧いたイメージを言葉にしていく感じです。届けたい人の胸のあたりにポンッと届くように、声にしてみてください」。

    亡き愛犬を想う詩、孫との思い出、被災の記憶など、さまざまな詩が紡がれましたが、いずれも相手の心に寄り添った詩になっていたように感じました。参加者からは、「私のペアは、私の思いを端的に詩にしてくれました。美しいと感じました」「情景が思い浮かぶ詩が書けたらいいなあと思いました」「それぞれの人の言葉のチョイスが面白かった」などの声が。最後には、それぞれの詩を書いた紙を、ペアとなった相手にプレゼントして、この日のワークショップは終了しました。

  • 体を動かしながら自己紹介

    参加者のみなさんの近況を聴く

    近況報告をもとにキーワードを書き出す

    聞きたい話を絵に描く

まさかの犬好きと犬嫌いのカップリング!?

    えずこに通う人たちは、すでに〝耕されている〟

  • ワークショップ終了後に、上田さんにこの日の感想を伺いました。

    ——今日の感想をお願いします。
    えずこホールのワークショップは2回目なんですが、すでにえずこさんに通っていらっしゃる60歳の方々は〝耕されている〟んですね。耕されている、つまりは、自分を表現することや、身の回りでいろいろ起こることに対応するのが楽しいということがわかっていらっしゃる、ということです。それはえずこさんの場の力でもあるし、そういう皆さんでもあるので、とてもやりやすかったです。

    ——参加者のみなさんがつくられた詩の印象は?
    いつも思うのですが、日常の中でちょっとこう心の奥に収めてきていたものや、あまり人に話してもしてないようなこととか、自分でもあまり気がついてないようなことを、ちょっと差し出す。すると受け取った相手は、それをそのままだったり、あるいはもう少し希望を乗せてたりだとか、笑いとか、希望とか、あとはすごい優しさとかも、乗っけてくれるんです。今日も、すてきな詩の言葉がいっぱい生まれたので、よかったなあと思っています。

    ——詩のワークショップで大切にしていることは?
    奥底にあるものを差し出して、それをこう丁寧に受け取ってもらうってこと自体がですね、生きていることの大切さとか、人と一緒に生きていることを感じられる瞬間だと思うので、そういう時間にしたいと思っています。

    ——えずこホール20周年に寄せて
    よそ者や新しい人、何か普段会わない人に出会えることは、ときめきだったりとか、ちょっと違う感覚が育まれるわけで、それを、えずこホールに通われている方たちはよくわかっているのかなと思います。これまでたくさんのアーティストを入れて、それによって〝耕された〟人たちが表現していく人になっていく。その、ずいぶん成熟してきたところで、今回20周年を迎えるのではないでしょうか。3月の祝賀会、楽しみにしています!

    (文:乾祐綺)

ペアの詩と挿絵が一枚に描かれ、今日のワークショップは終了