えずこホール開館20周年記念事業 えずこせいじん博覧祭




佐藤屋であいましょう

2016.11.05-06

事業概要


11月4・5・6日の3日間、大河原町にある百年を超える旧家佐藤屋で、地域を拠点に活動するさまざま団体やアーティストが発表を行いました

    旧家佐藤屋で行われた、3日間のアート活動発表会

  • 11月4・5・6日の3日間、大河原町にある百年を超える旧家佐藤屋で、地域を拠点に活動するさまざま団体やアーティストが発表を行いました。

    3日間常設の展示には、大河原町や柴田町に在住するアーティストが多数参加。画家の山家利治さんや岩澤誠一さん、ペイントアーティスト・さとうたけしさん、書家の小泉潤さん、佐藤奎山さん、イラストレータのおしのともこさんら6人の迫力ある作品が、歴史ある佐藤屋の美しい設えの中に並びました。

    5・6日の2日間は、えずこホールを拠点に活動する住民参加の音楽団体によるミニコンサート「であい・コンサート〜えずこミュージック♪アカデミー」も開催。えずこギター♪アンサンブルでは小学校2年生の生徒も参加。えずこ♪男声合唱団は美声に加え、2017年1月にえずこホールと同じく創立20周年を迎えるという報告も。5歳から10代の少年少女7人で構成された、えずこ♪ヴァイオリン&チェロアカデミーは美麗な合奏が秀逸でした。そのほか、12年の活動歴を誇るゴスペスグループ・e☆GGや、管楽器4名で構成されたえずこウインド♪アンサンブルなどが、訪れた方々を楽しませました。

    5日夜には、この3日間のメインイベントとなるキャンドルナイト・パフォーマンスが行われました。地元食材にこだわる蔵王町のアトリエデリスのオーナーシェフ・佐々木文彦さんによる限定50食のディナーをいただいたあと、常設展示にも参加したライブペインター・さとうたけしさんによるパフォーマンスを目の前で見られるという、なんとも贅沢な内容。佐々木さんは佐藤屋の雰囲気に合わせ、明治期の懐かしい洋食風のメニューに、地元産食材をふんだんに使った特別メニューを考案。参加された方々が口々に「おいしい!」と顔をほころばせている姿が印象的でした。さとうさんは、この日は龍をモチーフにしたものと、地元・大河原の桜と日本をイメージした大胆な2作品を仕上げてくれました。「思った以上にすばらしい作品を描くことができました。龍も他の場所で描くものよりも生き生きとしているように感じられるのは、この場所の力だと思いました。また、雄大な山と一緒に描いたのは大河原の桜です。地元の皆さんの前で披露できて本当に光栄です」と感想を語ってくれました。

  • 趣のある民家内でのコンサート

    仙南の作家の作品展示も

    夜はさとうたけしさんのパフォーマンスに盛り上がる

    〝蔵王風土〟を表現する食材工房「アトリエデリス」

  • 限定ディナーのほか、イベント期間中のランチ、カフェでのケーキ提供などをご協力いただいた「アトリエデリス」は、蔵王町にある洋惣菜や洋菓子、ケータリングのお店です。「出身は仙台ですが、縁あって20年ほど前に蔵王へ来ました。働いているうちに、蔵王の風土から生まれてくる食材のすばらしさに感動して。そして、そういう食材を作っていらっしゃる生産者は、だいたい誠実でステキな方が多いんです。そんな方々に、少しずつ仲間に入れていただけるようになり、蔵王で腰を下ろして、根を張っていこうかなと思い、13年ほど前に店を開きました」と話すのはオーナーシェフ・佐々木文彦さん。佐々木さんはフランスで研鑽を積んだ実力派。そんな佐々木さんが主宰するアトリエデリスは、地元はもちろん、遠方からもゲストが訪れる人気店です。「テーマは〝蔵王風土〟。蔵王産の食材を中心に、宮城県南のものを使って、ひと手間もふた手間もかけた料理を、皆様に楽しんでほしいという想いでやっています」。

  • 夜はアトリエデリスのディナー




    〝仙南の宝〟佐藤屋を守る地域の人たち

  • 佐藤屋は、地域の歴史・文化を今に伝える建物。その〝仙南の宝〟のような存在を守るために活動しているのが佐藤屋プロジェクトです。活動について、佐藤屋プロジェクト幹事・及川義行さんに話を聞きました。「6年程前から取り組みが始まり、現在会員は23名。毎月の例会のほか、3月の雛祭り、4月の桜祭り、秋の企画の際に、ここをお休み処として運営しながら、邸内を見てもらうことで、少しでも町内外の人に佐藤屋というものを知っていただくということを考えて活動しています。今となっては、これだけ古い建物が残っているのは、町内ではここだけ。なんらかの形で活動しながら、(佐藤屋と大河原の歴史を)後世に伝えていくのが大事ですね」とのこと。えずこホールと連携した今回のイベントについても、「大河原全体の文化向上に寄与するのでは」と、話してくれました。「今回来られたお客様の中で、『大河原にこういう芸術家がいることが初めてわかった』と感想を話されている方がいました。まだまだ知られていない若手アーティストは地元にはたくさんいます。そういう人たちを町民の人達に認識してもらう活動として大切ですし、それが同時に、地元の方々にアーティストを育てる目を持っていただくことにも繫がるのではないかなと感じました」(及川さん)。

    佐藤屋の現当主である佐藤源之さんには、自身の邸宅が公開・活用されることについて、その想いを伺うことができました。「こういった形で公開を行いますと、『この家の前を、通ったことはあるけど中には入ったことがない』という声を多く聞きます。昔、味噌や醤油の工場をやっていた頃は、小学生の遠足で見学の受け入れもさせていただいていたのですが、やはり中にまで入った経験がある方は少ないんですね。元々、この建物はできる限り元の状態のまま維持をしていこうと考えてはいました。ただ、そのまま残しても、昔は工場があり黙っていても人の出入りがあったんですけども、今は人の出入りがない状態。そうすると、建物自体が〝生きている感じ〟がしないんですよ。うまく活用していただけるような方法がないかと考えていたところに、佐藤屋プロジェクトの話があって、いろんな企画を始められるようになりました。佐藤屋プロジェクト自体、地元の皆さんに協力していただいているものなので、自然と町の人たちとの交流ができていっているというか、非常にうまくネットワークが広がりつつあるかな、と感じています。えずこホールと協力してやっていくことは、それを〝もっと〟広くするという意味で、私も、佐藤屋プロジェクトとしても、期待しています」。

    (文:乾祐綺)